【無機化学の覚え方まとめ】暗記量を減らすテクニックや裏技を紹介!

無機化学は酸と塩基の反応や酸化還元反応などにはじめ、気体や金属の性質など、暗記することが沢山ありますよね。

この記事では、 暗記量を削減するテクニック 覚えやすい裏技をまとめました。高校の授業や大学受験に役立つ情報を載せているので、是非ご覧ください。

今回は無機化学のおススメの覚え方を4つご紹介します。

  1. 定義と結び付けて暗記事項を減らす
  2. 一度学んだ事柄を別の方向からまとめ直す
  3. 語呂合わせを効率的に使う
  4. 共通する性質とイレギュラーな性質を分けて覚える

この記事では「酸塩基反応」「酸化還元反応」「気体の性質」「金属イオンの沈殿」「金属イオンの系統分離」などを例にとりながら、の覚え方を説明していきます。

無機化学の覚え方について

覚え方① 定義と結び付けて暗記事項を減らす

これは「酸塩基反応」や「酸化還元反応」などの勉強において大事な考え方です。

酸性・塩基性とは何か、など 理論的な概念を理解することで二つの物質の間で起こる反応を予測することができるようになります

まず、酸塩基の定義にはいくつかありますが、高校化学で重要な定義は 「ブレンステッド・ローリーの定義」です。

これは「酸とはプロトン(H+)を放出する物質で、塩基とはプロトン受け取る物質である」というものです。

この定義に酸・塩基の強さの概念を持ち込むと「強酸はプロトンを放出しやすく、強塩基はプロトンを受け取りやすい」となり、その中間の性質が弱酸や弱塩基と言えるわけです。

プロトンは陽イオンなので、「プロトンを放出しやすい物質」とは「負の状態で安定になる物質」と言い換えることができます。この状態の主な条件は以下の二つです。

  1. 分子中の原子の電気陰性度が高い
  2. 分子中の電子が十分に離れている

電気陰性度が高い、つまり周期表で右上にある原子が使われている物質は酸性度が高いのです。

これは、代表的な元素の電気陰性度の関係を覚えておくだけで、 酸の強さが導き出せることを意味しています。

次に2つ目の 分子中の電子が反発しない程度に離れていることは、原子の直径が大きいことを意味します。

ここで、ハロゲン化水素の酸性度を思い出してみてください。

電子陰性度が高いはずのフッ素が使われているフッ化水素は他のハロゲン化水素と比べて弱酸ですよね。

その理由が「原子の直径」であるのです。

このように、酸性度の関係は単なる暗記にとどまらず 電気陰性度や直径と関連付けることで、自分で導き出すことができます

暗記するにしても 「どうしてそうなるのか」が分かっていることで、より脳裏に刻まれるので記憶が長持ちします。

授業中や問題を間違えた時に、 「なぜそうなるのか」という理論的な説明を求める癖をつけると、反応式の意味の理解や記憶力が向上します

覚え方② 一度学んだ事柄を別の方向からまとめ直す

この覚え方は物質の生合成や性質などを網羅的に覚えたいときに有効な手法です。

授業では物質ごとに性質や合成方法などを学んでいくことが多いと思います。

しかし、それだけでは一対一に暗記しなければならず、系統的に学ぶことができません。

そこで、学習内容全体を俯瞰して「似たような反応が他の物質の生合成でも用いられていないか」「似たような性質で物質を分類できないか」を考えてみましょう。

ここでは「気体の実験的製法」を例にとります。

製法を覚えなければならない気体はH2, O2, N2, Cl2, HF, CO2…など多数あります。

それぞれ製法の式だけを見ていてもどういう原理でその反応が起きているのかを理解することは簡単ではないでしょう。

ただ、 どんな原理があるのかを分かったうえで、それぞれの反応式がどれに当てはまるのかを考えると、その反応に対しての深い理解につながります。

大きく分けて気体の発生には以下の6つの原理が主に考えられます。

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1.イオン化傾向

これは水素の発生に特有の原理で、Hよりもイオン化傾向が大きい金属に希硫酸を加えると金属がイオンになり発生するというものです。

「イオン化傾向が大きい」は「イオンになりやすい」という意味なので、金属が硫酸イオンと結合して追い出されたプロトンが水素を生成します。

2.強酸(強塩基)による弱酸(弱塩基)の遊離反応

これは強酸が弱酸よりプロトンを放出して解離しやすいことを原理とした反応で、CO2やH2S、SO2などの弱酸やNH3の弱塩基の発生に関わります。

3.酸化還元反応

銅に対して希硫酸によるNOの発生、濃硫酸によるNO2の発生、濃硫酸によるSO2の発生などに代表される反応です。

酸化還元反応の単元で覚えた半反応式と関連付けることで、より理解が深まるのではないでしょうか。

4.揮発性酸遊離(濃硫酸のみによる作用)

濃硫酸は唯一不揮発性の酸であることと、ルシャトリエの原理を利用した反応であり、HFやHClの発生に用いられます。

5.脱水作用(濃硫酸のみによる作用)

脱水作用も濃硫酸に特有であり、ギ酸から一酸化炭素の発生などが主な反応です。

6.分解反応

これは熱や触媒などの作用で期待が発生する反応で、二酸化マンガンでの酸素生成や硝酸アンモニウムへの加熱で窒素発生などがこれにあたります。

反応式だけではわからなかった原理や似た反応をまとめて覚えることで、すでに習った単元の復習にもなる上に、頭が整理されて暗記すべきことが覚えやすくなります。

覚え方③ 語呂合わせを効率的に使う

似た性質のものを分類してまとめて暗記することは無機化学の勉強において大事です。特に金属は、アルカリ金属やアルカリ土類金属、両性金属など様々な分類が存在しているので 語呂合わせで覚えることがおすすめです。

金属のイオン化傾向は「K Ca Na Mg Al Zn Fe Ni Sn Pb H Cu Hg Ag Pt Au」と長いですが、覚えておくべき配列です。この並びは先述のような水素の発生や硫化物イオンで沈殿する陽イオンの暗記の際に重要な役割を占めているからです。

語呂合わせは 「貸そうかな、まあアテにすんな、ひどすぎる借金」です。それぞれ以下のように対応しています。

貸そう(K)か(Ca) な(Na)、ま(Mg)あ(Al)ア(Zn)テ(Fe)に(Ni)すん(Sn)な(Pb)、ひ(H)ど(Cu)す(Hg)ぎる(Ag)借(Pt)金(Au)

他にも、覚えにくい不動態(Al, Cr, Fe, Co, Ni)についての語呂合わせもあります。

「歩く徹子に不動産」という語呂で、それぞれ「歩(Al) く(Cr) 徹(Fe) 子(Co) に(Ni) 不動産(不動態)」と対応しています。

金属イオンの性質で最も覚えにくい「金属イオンの系統分離」も語呂合わせを知っておくとよいでしょう。

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炭酸イオンで沈殿する陽イオンはアルカリ金属イオンやNH4+を除くほとんどのイオンが沈殿するので、沈殿しない金属Na+, K+, NH4+を使って「炭酸イオンとあん(NH4+)まり仲(Na+)(K+)良くない」という語呂合わせがあります。

塩化物イオンで沈殿するイオンはAg+, Pb2+, Hg2+でありこれは「銀(Ag+)のなま(Pb2+)はげ(Hg2+)」と覚えましょう。

硫酸イオンで沈殿する陽イオンはBa2+, Ca2+, Sr2+, Pb2+ であり、「ば(Ba2+)か(Ca2+)にする(Sr2+)な(Pb2+)硫酸」の語呂合わせが考案されています。

最後にクロム酸イオンで沈殿する陽イオンはAg+, Ba2+, Pb2+であり、「苦労(CrO4*2-)して赤い銀貨(Ag+)で黄色いバ(Ba2+)ナナ(Pb2+)を買う」では沈殿の色と共に覚えられます。

覚え方④ 共通する性質とイレギュラーな性質を分けて覚える

先述のように、似た性質同士で分類してまとめて暗記することが効率の良い覚え方です。

その分類の中でも何が共通した性質で、何がイレギュラーな性質なのかを分けて覚えることで 暗記の二度手間を省略することができます。

例えば、金属の沈殿の色はほとんどが「白色」です。

そのことを知っていれば、それ以外のイレギュラーな色(水酸化鉄(II)の緑白色、水酸化鉄(III)の赤褐色…など)を覚えることだけに注力することができます。

先述のような炭酸イオンで沈殿する陽イオンの場合は、該当する陽イオンの種類が多いため、逆に沈殿を作らないイオンを覚えるということが効率的な覚え方だと言えます。

また、共通する性質やイレギュラーな性質は 「表」を作って可視化することで覚えやすくなります。

ここでは、塩基で沈殿する陽イオンについて、沈殿形成や錯イオン形成の反応を例にしてみます。

6種類の金属について、少量のNH3、過剰なNH3、少量のNaOH、過剰なNaOHを加えた時のふるまいを示しています。

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この表では、少量のNH3もしくはNaOHを加えた場合にはすべて沈殿しており、過剰なNH3又はNaOHを追加した場合に錯イオンを形成して溶けるか、そのまま沈殿したままかという違いが明確になっています。

沈殿したままであるものを一般的な性質だととらえることで、過剰な塩基に溶解する金属イオンを分類し、イレギュラーな反応をまとめて暗記することができます。

このように主要な金 属すべてについて表にして比べてみることで、何を覚えるべきなのかが明確になって、頭に残りやすくなるのです。

以上、無機化学の覚え方を4つ紹介してきました。

  1. 定義と結び付けて暗記事項を減らす
  2. 一度学んだ事柄を別の方向からまとめ直す
  3. 語呂合わせを効率的に使う
  4. 共通する性質とイレギュラーな性質を分けて覚える

効率的で効果的に学ぶためには、理論化学を無機化学に当てはめて性質を理解することや、単元を横断して学びをすることが必要になってきます。

なにより、 性質ごとに物質を分類し、共通する性質と特異的な性質を区別して暗記することが最も重要です。

語呂合わせや意味付け、表の作成などを行うことで五感を駆使して、無機化学を覚えていきましょう!

参考文献

理系ラボ│金属イオンまとめ(色・沈殿・分離)
受験の月│金属イオンの沈殿(無機化学金属元素最重要事項)