日本史とは切っても切り離せないのが、天皇の存在です。天皇は日本という国が成立してから現在まで何世紀にもわたって受け継がれてきました。
現在の天皇は日本の象徴とされていますが、戦前の天皇は政治の主体となることが多く、日本史の問題でもよく取り扱われます。
天智天皇と天武天皇、醍醐天皇と後醍醐天皇など似た名前の天皇が多いので、区別して覚えなければなりません。
本記事では天皇の覚え方を様々な観点から紹介していきます。
目次
歴代天皇の覚え方

天皇の覚え方①覚えるべき事柄を厳選する
大学受験の問題を解くための暗記であれば、 すべての天皇の名前を覚える必要はありません。
時代の特色ごとに天皇の存在感が大きくなる時と小さくなる時があります。受験では、 力が大きくなる時期の天皇だけを覚えて効率的に得点しましょう。
明治時代には 一世一元の制が採用されているので、明治時代以降は天皇一代につき、一つの元号となっています。なので、覚えるべき天皇は江戸時代以前に限られます。
飛鳥時代や奈良時代は 推古天皇、 天智天皇、 聖武天皇など天皇を中心に政治が動きます。
平安時代初期は、 桓武天皇や 嵯峨天皇などが貴族を抑えて強い力を行使していましたが、次第に 藤原氏の力が増してきます。摂関政治が始まった10世紀後半からの平安時代は貴族による政治と言えます。
平安時代末期の11世紀後半には 上皇による院政が始まり、天皇側の政治になります。一方で、天皇は武力として武士を頼るようになり、次第に武士が力をつけて鎌倉時代に移行します。
南北朝時代は天皇の血筋で対立が起こった時代です。この動乱が静まると 足利家が政治をつかさどる室町時代となります。安土桃山時代と江戸時代では再び武士の世の中となります。
天皇は 名前だけ覚えるのではなく、時代の名前や特色とセットで覚えましょう。しかし、貴族中心から武士中心の政治に切り替わるのはなめらかな変化なので、時代での区分は覚えにくい場合があります。
「天皇と時代」のセットで覚えるだけではなく、「天皇と文化」のセットも合わせて覚えて知識を補強しましょう。
天皇や貴族が活躍する時代(飛鳥時代~平安時代、南北朝時代)は天皇が目まぐるしく変わるので大変かもしれません。
貴族(当時の権力者)を関連付けて、以下で紹介する比較・グルーピング・出来事や文化と関連させて覚える方法などを使って頑張って覚えましょう。
武士が活躍する時代は本腰を入れて覚える必要はありませんが、「安土桃山時代に、秀吉が建てた聚楽第に後陽成天皇が案内された」など細かな知識として出題される可能性もありますので油断はしないようにしましょう。
歴史の中心となる本筋とは別の場所で、天皇の世界が動いていることを意識できると良いですね。
天皇の覚え方②比較やグルーピングして覚える
似たような事柄を比較したりグルーピングしたりすることは暗記の鉄板の手法です。例えば下の図では、飛鳥時代から平安時代にかけての遷都をひとまとめにして書き出しています。
このようにまとめることには、 天皇が変わるたびにどのような変化が起きたのかを流れに沿って把握できるという利点があります。
ここでは遷都の遷移を振り返ってみましょう。
近江大津宮に遷都した 中大兄皇子は翌年即位して 天智天皇となり、天智天皇がなくなると皇位継承をめぐって 壬申の乱がおきます。
壬申の乱に勝利した 大海人皇子は 飛鳥浄御原宮で即位し、 天武天皇となります。
天武天皇は 藤原京の造営を始めましたが、その完成前に亡くなったので、天武天皇の皇后である 持統天皇が諸政策を引き継ぎます。その一環として 飛鳥浄御原令の施行や 藤原京の遷都を行いました。
このように遷都一つをとっても、 世代を超えた流れが存在することが分かります。 天皇の後継者は息子や皇后など親族であることがほとんどなので、必然的に政策が似るのでしょう。
だからこそ試験で問われやすくなるので、名前と政策を比較して、区別して覚える必要があります。 桓武天皇と 嵯峨天皇、など時代が離れていない天皇の政策を比較してみましょう。
天皇の覚え方③歴史的事象と関連させて覚える
天皇が関わる歴史の中で最も覚えづらい事柄の一つが、 南北朝の動乱です。南北朝は鎌倉時代と室町時代の間に相当し、天皇同士の対立が起きた時期です。
南北朝の動乱の流れを理解するためには、天皇の系統に注目する必要があります。また、重要用語となっている出来事と関連させて覚えることも大切です。
後嵯峨天皇の子には 亀山天皇と 後深草天皇がおり、 後嵯峨天皇が亡くなると、 大覚寺統・ 持明院統という派閥に分かれました。
皇位継承をめぐって両統は争いましたが、鎌倉幕府は 「両統迭立」を提案し、 両統から交代で天皇を出す仕組みになりました。
大覚寺統の 後醍醐天皇は両統迭立に不満を持っていたため、討幕を目的に 「正中の変」と 「元弘の変」を起こしますが、どちらも失敗に終わります。
それを受けた幕府は 持明院統の 光厳天皇を推し即位させますが、 後醍醐天皇は 光厳天皇を廃して 「建武の親政」を始めます。
足利尊氏は 持明院統の 光明天皇を立て、対して 後醍醐天皇は吉野にこもって正統の皇位を主張します。 大覚寺統が南朝に、 持明院統が北朝に分かれ、南北朝の動乱が始まります。
このように南北朝時代には二つの派閥に分断され、 鎌倉幕府や 足利尊氏など当時の権力者も巻き込んで対立を深めていきます。
誰が何故どのような行動をとったのか、誰が誰の派閥と組んでいたのかなどを明確にして、「両統迭立」や「正中の変」など用語と一緒に覚えていきましょう。派閥を理解するには天皇の家系図を見るのが良いですね。
天皇の覚え方④文化と関連させて覚える
今までの勉強で大まかな流れを理解することができたら、文化史と関連させるなどして細かな知識を補っていきましょう。
例えば、平安時代の 醍醐天皇の期には 『古今和歌集』が、 鎌倉時代には 後鳥羽上皇の命令で 『新古今和歌集』が編纂されています。
天皇と文学は関わりが深く、他にも院政期の 後白河上皇が 『梁塵秘抄』を編んだことなども有名です。時代名と天皇名は文化を関連付けて覚えておきましょう。