日々忙しい現代の学生さんや会社員の方は、何かと生活リズムが乱れ、睡眠不足にもなりがちです。しかし、生活リズムの乱れは生活習慣病をはじめとした様々なリスクをもたらします。
本記事では生活リズムを整えるメリットと、生活リズムを整えるコツを科学的根拠を交えて紹介していきます。
生活リズムを整えるメリット
メリット① 成績の向上が期待できる
田村典久氏らの中学生を対象にした研究では、平日と休日の起床時間の乖離は、入眠困難や睡眠の質の悪さ、睡眠不足、日中の眠気、疲労、イライラ、学業成績の悪さと相関があったと報告されています。
逆に言えば生活リズムが整えば、 睡眠の質が向上日中の眠気を感じなくなったり、成績の向上が期待できるということです。
ちなみに、平日と休日の起床時刻の乖離が2時間以上ある生徒は全体の38.4%いたようです。多くの人ができてないことをできるようにすることで周りの人と差をつけることができます。
メリット② 病気のリスクが激減する
生活リズムの乱れは多様な病気の原因になります。例えば、体内時計が狂うと 糖尿病や 高血圧になる確率が高まります。
実際に、 不眠症状がある人は将来糖尿病や高血圧になる確率が通常より2~3倍高いと言われています。
体内時計は血糖を下げる働きがある「インスリン」の分泌を制御しております。睡眠の質の低下や時間の短縮がインスリンの働きを低下させることによって、糖尿病を引き起こすのです。
また、生活リズムの乱れによる 睡眠不足は過食や肥満も助長してしまいます。睡眠不足により食欲を増進するホルモンの分泌が増え、食欲を抑制するホルモンの分泌を抑えられてしまうからです。
不規則な生活を余儀なくされるシフトワーカーを対象にした調査では、 メタボリック症候群発症の危険度が一般人の1.5倍以上、 肥満の危険度は5倍以上とされています。
また、 がんのリスクが上昇することも報告されています。海外の研究報告では夜勤業務の女性は 乳がんのリスクが約1.5倍程度上昇することが明らかになりました。
また、交替制勤務者の男性も日勤者にくらべて 前立腺がんに3.0倍もかかりやすいこともわかっています。
では、正しい生活リズムで過ごすためには、何に気を付ければよいのでしょうか。
理想の生活リズムについて、整えるには、 「睡眠」「食事」「運動」3要素が重要です。では、それぞれを科学的根拠を交えて紹介していきます。
生活リズムの整え方 ~睡眠編~
睡眠編① 起床時刻を一定にする
生活リズムを整えるために最も重要なのは、 起床時刻を一定にすることです。平日の起床時間は学校や仕事に合わせて一定になっている方が多いかと思います。
その睡眠スケジュールをできる限り週末にも維持しましょう。平日の睡眠不足を解消するために 休日に寝だめをすると普段より起床時刻が遅くなり、体内リズムの乱れを引き起こします。
この現象は学術的に「ソーシャル・ジェットラグ」と呼ばれており、まるで異国に来た時のように脳が錯覚してしまうことを意味します。朝寝坊したときは日の光を浴びるタイミングが遅れます。
すると体内時計が後退し、生体内のホルモン分泌などの時間もずれてしまいます。実際、 休日二日間を普段より遅く起床するだけで体内時計が30~45分遅れてしまうとわかっています。そのずれのせいで 月曜日の朝に起きるのが困難になってしまうのです。(下図参照)
ちなみに、睡眠のタイミングについては、成長ホルモンが一番出るゴールデンタイムが22時から翌日2時までだから、22時に寝ようという話を聞いたことがあるかもしれませんが、この時間に医学的根拠はありません。
むしろ頑張ってゴールデンタイムに寝ようとして就寝時間が不規則になると、起床時間も不規則になりがちです。それよりは 普段の睡眠リズムを崩さない生活習慣を維持すべきです。
睡眠編② 就寝前のブルーライトを減らす
ブルーライトは太陽光だけではなく、デジタルの画面からも放出されます。夜遅くまでスマホなどを使うと脳が活性化したままになるので、睡眠の質が低下してしまいます。
就寝1時間前から スマホやパソコンを見るのをやめて、暗めの部屋で過ごすように心がけましょう。
また時間帯によって使う照明を切り替えることもおすすめです。LEDライトのような涼しげな色(寒色系)のライトは覚醒作用があります。
一方、白熱電球のような色(暖色系)のライトは覚醒作用が比較的弱いです。色調機能のある照明を使っている方は、夜は暖色系のを使って生活してみると良いでしょう。
生活リズムの整え方 ~運動編~
運動編① 朝は太陽光を浴び、散歩をする
生活リズムを整えるためには朝の過ごし方が重要になります。目覚めをよくさせるためには太陽光 による刺激と 運動による刺激が効果的です。
太陽光に含まれるブルーライトは、脳を覚醒させる作用がある「セロトニン」を分泌させます。朝は起きたらすぐにカーテンを開けて 日光を浴びましょう。
また、セロトニンはリズム運動によっても活性化されるので、 外に出て15~30分ほど散歩をするとより効果的です。
運動編② 一日20分以上の有酸素運動を行う
朝に散歩は厳しいという方も、一日20分以上の有酸素運動を行うようにしましょう。運動を行うことで 夜の寝付き良くなり、目標の時間に就寝できるようになります。有酸素運動というのは負荷が比較的低い運動のことです。
そのためランニングに限らず散歩などでも十分に効果はあります。定期的に有酸素運動を行うことは、 集中力を高めてくれたり、生活習慣病のリスクを下げたりと様々なメリットがあります。
在宅の機会が増え普段運動不足の方は、この機会に運動を始めてはいかがでしょうか。
生活リズムの整え方 ~食事編~
食事編① 朝食を十分にとる
体内時計は光の刺激だけではなく、特に「朝食」によっても調整されています。 起床後1時間以内の食事によって末梢時計がリセットされます。ダイエットをしている人や朝が忙しい人でも朝食を欠かさないようにしましょう。
しかし、ジュースや栄養ドリンクなどで 朝食を軽く済ますだけではあまり効果がないと言われています。マウスを使ったある実験では、朝食の量が少なすぎると朝食を抜いたときと同様に体内時計をリセットする効果が見られませんでした。
体内時計を整えるためには、 1日の食事量の4分の1は食べる必要があるとも言われています。米や小麦などの炭水化物やタンパク質を摂ってエネルギー補給しましょう。
食事編② 食事のタイミングを一定にする
食事は必ず同じ時間にとりましょう。特に朝食の時間を一定にすると代謝のリズムが整い、朝から体が活動しやすい状態になります。
一般的に食事は6時間間隔で1日3食とることが推奨されています。しかし、昼食や夜食の時間がずれてしまいそうな場合には1日2食にして適度に間食をとるのがおすすめです。
また、 夕食から朝食までの間隔を少なくとも8時間は取れるようにしましょう。末梢時計は8~12時間の絶食後にはじめて食べた食事によってリセットされると言われています。
夕食が遅いと朝食までの時間が十分に確保されず、体内時計がリセットされにくくなってしまうので、夕食の時間は午後9時までには済ませ、夜食は取らないようにしましょう。
参考文献
ヘルスUP病気・医療│不規則生活、不調・肥満招く 体内時計の管理に注意
JACC Study│交替制勤務者の前立腺がんリスク
ソニー健康保険組合│休養と生活習慣「睡眠不足は肥満の大敵」
DIAMOND online│精神科医が「絶対にやるべきだ」と断言する朝のベスト習慣
ナショジオ睡眠│夜型生活から脱却する効果的な方法
サライ.jp│ノーベル賞受賞で注目!「体内時計」の研究でわかった健康生活2つの原則【予防医療の最前線】糖尿病患者・予備軍のための食事ガイド│糖尿病患者の食生活に大事な2つのコト
睡眠リズムラボ│ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ぼけ)とは?寝だめによる体内リズムの乱れ
睡眠リズムラボ│ 寝つきを良くする、快眠に導く「生活のススメ5選」