「単語を効率的に覚える方法を知りたい!」
「英単語を覚えなければいけないけど、1日何個ずつ覚えたらいいのだろう?」
定期テストや受験勉強で英単語をはじめとする単語の暗記をしようとするとき、誰もがこのような悩みを抱くでしょう。
そこで、人間の記憶のメカニズムに基づいた効率的な単語の暗記方法をご紹介します。
「単語は1日に何個ずつ覚えるべきか」ということについて、具体的な例を用いて分かりやすく解説しました。
テストに向けて、単語を覚える際の参考にしてみてください!
単語は1日何個ずつ覚えるべきか
単語を覚えようとするとき、「1日に何個覚えるべきだろう」と考える人が多いと思います。
しかし、結論から言うと 「1日〇個ずつ」とするよりも、まとまった数の単語を毎日見る方が効果的です。
むしろ、人間の記憶のメカニズムに基づけば、 「毎日新しい単語を〇個ずつ覚える」というやり方は効率的ではないのです。
これから、その理由について詳しく解説します。
「1日10個×10日」よりも「100単語を10日間見る」
例えば、10日間で100個の単語を覚えるという目標があるとします。
そこで「毎日10個ずつ覚える」という方法をとったとしましょう。
つまり、今日は1個目~10個目、明日は11個目~20個目という様に覚えるやり方です。
すると、それぞれの単語につき1回ずつしか見ることができません。
その日のうちは新しい10個の単語を覚えていられても、10日目には1日目や2日目に見た単語のほとんどを忘れているでしょう。
一方、100個の単語すべてを10日間、毎日見たとします。この場合、全ての単語を10日間で復習できます。
この方法では、 1つ1つの単語をより多くの回数復習ができるため、同じ期間勉強した前者の方法よりも長期的に単語を記憶していられると言えます。
下図:「毎日10個ずつ覚える」方式と「全ての単語を毎日復習」方式の違い
しかし、500個、1000個という膨大な数の英単語を覚えなければならない場合、毎日全ての単語を見ることは不可能に近いです。
そこで、 覚えるべき単語をグループに分割して管理する方法をご紹介します。
1カ月で200個の英単語を覚える具体的な方法
「1カ月で200個の英単語を覚える」という目標で、実際に計画を立ててみます。
「1つの英単語を見る回数が多いほど長期的に記憶することができる」という考えに基づけば、 200個の単語を1カ月間毎日復習する方法が理論的には最適です。
しかし、それでは毎日1周するだけで膨大な時間がかかってしまいます。
そこで、 200個の単語を50個×4つのグループに分け、A、B、C、Dと名付けます。
初めの1週間はAグループの50単語を毎日見る、次の週はBグループの50単語を毎日、というように期間を分けます。
また、「2週目の終わりにAグループの復習をする」など適宜前のグループを復習する機会を設定します。
このようにすれば、大量の単語を覚える時にも1つ1つの単語を定期的に何度も復習することができます。
上の例はあくまで一例に過ぎません。「毎日〇個ずつ新しい単語を覚える」よりも、 「ある程度まとまった数の単語を何度も復習する」と1つ1つの単語を復習する回数が多くなることを覚えておきましょう。
大まかな計画の立て方について理解できたところで、さらに効率的に英単語を覚える細かい方法や、計画通りに実行するコツをご紹介します。
英単語を覚える時のコツ3選
コツ①「覚えた単語」と「苦手な単語」を区別する
単語帳で50個の単語を覚えようとしているとき、比較的すぐに覚えられた単語と、暗記に時間がかかる単語があると思います。
それら全ての単語を均等に見直していては、余計に時間がかかってしまいます。
そこでおすすめなのが、 付箋などを使って「暗記済みの単語」をチェックする方法です。
以下でそのやり方の一例をご紹介します。
- ある程度「暗記済みの単語」が増えてきた段階で、単語帳の「暗記できていない単語」の欄のみに付箋を貼る。
- 付箋のついた単語を優先的に復習するようにする。
- 覚えたものから付箋を外すか、本から飛び出ないように貼り直す。
また、逆に 覚えた単語に〇やチェックを付けていくという方法もあります。この方法なら、付箋を使わずに覚えたものからすぐに区別きます。
コツ②単語を表す映像をイメージする
単語を覚える時、「映像をイメージして意味を掴む」という方法があります。しかし、全ての単語に対してイメージを加えるのは大変です。
なかなか覚えられない単語や、意味の似た単語を区別する時にはイメージを上手く使うと覚えやすいです。
例えば、似た意味を持つ単語に”appear”と”emerge”があります。
どちらも日本語に訳すと「現れる」という意味になりますが、”appear”は「予期せず人や物が突然現れる」、”emerge”は「見えなかったものが浮かび上がってくる」という意味を持ちます。
これらの単語を覚える時、”appear”に対しては「道の角から猫が飛び出してきた」、”emerge”に対しては「池の中に目を凝らすと、魚の影が浮かび上がってきた」という映像を当てはめます。
単語を復習する度にこれらの映像を思い出せば、感覚的に意味を覚えられます。
コツ③日常生活に組み込んで習慣化する
英単語を効率よく覚えるためには、同じ単語を何回にも分けて復習する必要があります。
英単語を少ない労力で覚える一番手っ取り早い方法は、 「単語帳を見る」という行為を習慣化してしまうことです。
とはいえ、いきなり「今日から毎日、30分間英単語を覚えるぞ」と思っても、簡単には習慣化できないでしょう。
習慣化をするためのコツは、 「すでに身についている習慣にくっつける」ということです。
例えば、朝ごはんを食べたり、歯を磨いたり、通勤通学することは習慣になっている方が多いと思います。
これらの習慣に「英単語を見る」という習慣をくっつければよいのです。
「朝ごはんを食べながら、単語帳を見るようにする」、「電車に乗っている間は単語帳を見ることにする」などといった方法があります。
こうすることで、さほど意識しなくても自然に毎日単語帳を見ることができ、効率よく英単語を覚えることができます。
人間の記憶のメカニズム
大前提:長期記憶には復習の回数が重要
大前提として、 人は何度も経験した物事ほど長期的に記憶できます。
このことは、多くの人が経験的に理解しているでしょう。例えば、一度見ただけの電話番号は、その後数十秒間ほどしか記憶していることができません。
しかし、何度も入力した自分の電話番号は、何カ月経っても忘れることがありません。
人の記憶のメカニズムを説明する上で、しばしば登場する理論が「エビングハウスの忘却曲線」です。
この曲線は、時間の経過とともに人が維持する記憶が減っていく様子を表しています。さらに、定期的に復習することで曲線が下がる割合を抑えることができます。
つまり、 「人は何度も復習することで長期的に記憶を維持できるようになる」ということを、この曲線が示しているのです。
では、どのタイミングで復習すれば、最も効率的に記憶できるのでしょうか。
最も効率的な復習のタイミング
結論から言うと、 現時点では「科学的に最も効率的な復習のタイミング」は明らかになっていません。
様々なメディアで、「徐々に間隔を伸ばしながら何度も復習する(拡散分散学習)」ことが最も効率的であると言われています。
つまり、初めて見た単語をその1日後、3日後、7日後…というように何度も復習するということです。
しかし、「均等な間隔で復習する(均等分散学習)よりも、徐々に間隔を伸ばした復習(拡散分散学習)の方が効率よく単語を暗記できる」という説は、 科学的根拠に基づいているのでしょうか。
この説を支えている資料にLandauer & Bjork (1978)による研究があります。
この研究では、均等分散学習よりも拡散分散学習で、記憶がより強く維持されたことが報告されています。
その他、拡散分散学習が有効であるとする結果を示した研究は多数存在しています。
一方でこれらの研究とは対照的に、 均等分散学習と拡散分散学習では記憶の保持率に差はなかったと示す実験も複数あります。
両者の研究結果を注意深く観察すると、 拡散分散学習が均等分散学習よりも強い効果を発揮するのは、短期記憶においてのみであることが分かったのです。
また、拡散分散学習が記憶保持に有効であることが示されたのは、復習後のフィードバックが無い場合に限られています。
(単語帳での学習ではその都度正解を確認するため、「フィードバック有り」です。)
一方、長期記憶に有効な復習のタイミングについては有効な説がありません。
以上の結果を踏まえると、英単語を効率的に覚えるためには、
何度も復習することが重要であるが、そのタイミングについては科学的な正解は不明
ということになります。
この情報を基にすると、先ほどの「1日10個×10日」よりも「100単語を10日間見る」という覚え方につながりますよね。
まとめ
ここまでの内容をまとめると、次のようになります。
- 英単語を長期的に覚えるためには、復習する回数を重ねる必要がある
- 「間隔を伸ばしながら何度も復習する」という方法は短期記憶にのみ有効
- 長期記憶に有効な復習のタイミングは不明
- 「1日〇個ずつ」とするよりも、まとまった数の単語を毎日見る方が効果的
- 「暗記済みの単語を分ける」「単語の意味を映像化する」「日常生活に組み込む」ことで効率的に英単語を覚えることができる
人の記憶のメカニズムに基づいた英単語の暗記方法をご紹介しました。試験対策などで英単語を覚えたいときの参考にしてみて下さい。
参考文献
関西大学 学術リポジトリ|復習間隔を少しずつ広げていくことは長期的な記憶保持を促進するか? 先行研究の批判的検証