「長文をスムーズに読めるようになるには、たくさんの英文を暗記するとよい」というアドバイスを聞いたことはあるでしょうか。
でも、英文の暗記が読解にどのように役立つのか、また英文を暗記するにしても、どうやって暗記すればいいのかのイメージが湧きにくい人もいるでしょう。
この記事では、英文の暗記が長文読解の対策に役立つ理由と英文を暗記するコツについて説明します。すぐに役立てられるテクニックばかりなので今日からの勉強にぜひ役立ててください。
英文の暗記が長文読解に役立つ理由
そもそも、英文を暗記することがなぜ長文読解に役立つのでしょうか。それは、 英文を暗記することで、その文に含まれる単語や文法を一度に関連付けて覚えられるため です。
英単語を覚える時、単語の逐語訳を一つひとつ覚えるのはあまり効果的といえません。
文脈の中で覚え、その語の前後にどのようなものが来るかを合わせて覚えておく と、長文を読んでいる中で同じ単語が似たシチュエーションの中で出てきた時に 記憶からスムーズに取り出すことができます。
また、人間のあらゆる学習には関連のない単語・ことがらをバラバラに覚える無意味学習 よりも、ことがらをストーリーの中で関連付けて覚える有意味学習の方が記憶に残りやすい という特徴があります。
英単語とその日本語訳を一つひとつ機械的に覚えるよりも、 複数の単語とそこに含まれている文法事項を文の形で一度に覚えると効率的です。
同時に文単位で意味も覚えてしまうと、結果としてさらに効率的に学習できるでしょう。
英文暗記に役立つ教材は?
読者のみなさんが英文を暗記する目的は、大学受験の長文読解に役立てるためです。よって題材には、大学入試に出てくるような単語や文法項目が含まれている次のような教材を選ぶことをおすすめします。
① ALL IN ONE
合計419本の例文の中に、英検2級〜準1級レベルの英語の頻出単語・熟語3710語が凝縮されており、かつその中には 大学受験で必要となる英文法の全範囲が網羅されています。
また、例文の和訳はすべて英語の語順に合わせた 「読み下し和訳」となっているため、 単語や文法がよく記憶に残り、また英語を英語の語順で理解できるスピードが高まるために、リスニングやリーディング力の向上も期待できます。
なお、ALL IN ONEは 難関大学の入試向きです。英語に苦手意識のある方、高2以下の方は無理せず、レベルを下げた「ALL IN ONE Basic」で基礎固めをされることをおすすめします。
② Duo 3.0
日本の「いろは歌」をヒントに、 現代英語の重要単語1600語と重要熟語1000語を重複なしで560本の英文に凝縮させた教材です。
これ1冊を覚えるだけで、標準レベルの単語集1冊分の単語と熟語集1冊分の熟語をマスターすることができます。
すべての英文はアメリカの大学教授3名を含む15名のネイティブスピーカーによって丁寧に作成されており、自然で実用的なものとなっています。
③ 速読英単語 必修編[改訂第7版]
速読英単語 必修編には近年の入試傾向を反映したテーマに基づいた、全70本の英語長文があります。これを通じて 大学入試に出題される単語の95%をマスターすることができる教材>です。
なお、この「必修編」は共通テストから難関大学入試を照準にして作られています。同シリーズには「中学編」「入門編」「上級編」とレベル分けがされています。
自分の英語力や志望校の難易度に合わせて選ぶとよいでしょう。
英文暗記の正しい手順は、理解してから覚えること
英文を暗記する時は、 文字と音の両方を手がかりにしながら、英文を何度も体に刷り込ませるようにして覚えます。
ただその前に、そこに含まれている単語や文法の不明点は取り除いておかないと、意味のない文字列を無理やり覚える「無意味学習」となってしまい、長期的な記憶に繋がりません。
またせっかく英文を暗記するのに発音を誤ったまま覚えてしまうと、仮に暗記が長文読解で役に立ったとしても、リスニングやスピーキング試験での失点の原因になってしまう可能性があります。
英文を暗記する際は、 単語、文法、発音をひとつひとつ手順を追って理解しながら覚えるとよいでしょう。
以下に、英文暗記の手順を示すので参考にしてください。
英文暗記の手順① 英文の理解と音声学習の準備
まず英文に一通り目を通して、 文章全体の概要を捉えます。次に、付属の音声を句や節ごとに区切ってゆっくり聞きながら、単語の発音にも注意を向けつつ 黙読します。
その後、英文テキストの意味内容を詳しく確認しましょう。必要に応じて辞書や参考書も使いながら丁寧に読み、 英文を見て分からない部分がないようにします。
文構造や英文の内容がクリアになったらまた音声を聞き、発音する上でポイントとなる区切りの部分やイントネーションを手元のテキストに書き込みます。
英文暗記の手順② 手本となる音声を使いながら、段階的に音読を繰り返す
①でテキストに目印をつけた区切りごとに音声を一時停止して、 「リッスン&リピート」を繰り返しましょう。
何度も繰り返し練習してスムーズにできるようになったら、今度は 「パラレルリーディング」、です。英語の音声を流しておいて、お手本の音声にかぶせて発音していきます。
お手本に沿って正しい発音で読めるようになったら、今度は お手本なしでスムーズに読めるようになるまで何度も繰り返し音読を行います。
英文暗記の手順③ 少しずつ、手本の音声やテキストから離れる
スムーズに音読ができるようになったテキストの上に ボールペンを1〜2本斜めに置き、②で行った「パラレルリーディング」お手本の音声とほぼ同時並行で音読する練習を進めます。
一部のテキストを隠した状態で、音声を手がかりに、見えない部分も発話できるようになるまで練習を行います。
それができたら、いよいよ暗記の一歩手前 「リード&ルックアップ」です。テキストを句や節の単位で黙読した後、文字から目を離し顔を上げてその文を発音します。
英文を一時的に記憶して発声することを繰り返すと、英文が少しずつ短期記憶から長期記憶にインストールされていきます。
英文暗記の手順④ 完全に暗記する
最後は英文をまるごと暗記します。ただ、何もない状態で暗誦するのが難しければ、10語のうち2〜3語程度キーワードを残しましょう。
あとは英文を削除したテキストもしくはメモを作成して、それを手がかりに音読するとよいでしょう。
まとめ
英文を暗記するプロセスのイメージはついたでしょうか。テキストと音声の両方を参照しながら、目や耳、口をフルに使って身体で覚えるのがコツです。
今日この後の勉強から、ぜひ試してみてください。
参考文献
白井 恭弘(2013)英語はもっと科学的に学習しよう SLA(第二言語習得論)からみた効果的学習法とは
plum garden│第二言語習得の研究者に聞いた、効果的な英語学習法
門田 修平(2020)音読で外国語が話せるようになる科学 科学的に正しい音読トレーニングの理論と実践